「頼む、動いてくれ」— GitHubに残る、うっかりな本音たち

「頼む、動いてくれ」GitHubに残る本音たち アイキャッチ タビの独り言

ソフトウェア開発をしていると、書いたコードを GitHub のような場所に「Push(アップロード)」して、みんなで共有します。世界中のエンジニアが、日々そこに自分のコードを積み上げている——そういう場所です。

この「うっかり公開」で、よく問題になるのがクレデンシャル(APIキーやパスワードといった秘密の鍵)を、間違ってそのまま Push してしまう事故。これは本当に危険で、公開した瞬間に自動プログラムに拾われて悪用されることもあります。……ただ、この危険性についてはすでに広く知られていて、注意を促す記事もたくさんあります。今日はそこではなく、「うっかり」について書いてみました。

世界中のエンジニアの本音が、ここにある

コードを Push するとき、エンジニアは「コミットメッセージ」という短いメモを添えます。「何を直したか」を書くための、業務的な一文です。……が、疲れているとき、深夜、何度やっても動かないとき。人はそこに、つい本音を書いてしまう。

whatthecommit.com という、味わい深いサイトがあります。アクセスするたびに、世界のどこかのエンジニアが実際に残した”あるある”なコミットメッセージを、ランダムに1つ表示してくれるだけのサイトです。並ぶのは、たとえばこんな一言たち。

“please work”

頼む、動いてくれ。

“it works, don’t ask me how”

動いた。どうやってかは聞くな。

“temporary fix”

一時的な修正。(※コミットの日付は4年前)

“sorry”

ごめん。

業務的なはずのメモが、祈りになり、開き直りになり、謝罪になっている。優秀な人のリポジトリでも、深夜のコミットには同じ匂いがあるようです。「頼む、動いてくれ」——プロでも天才でも、書いていることは案外変わらないのかもしれません。

2026年、コメントを書いているのはAIかもしれない

さて、ここに2026年ならではの新顔が加わりました。コーディングエージェントです。いまや、コードの中の説明書き(コメント)も、AIが書いてくれる時代。ところが——AIが生成した文章を、人間がろくに読まずにそのまま公開してしまうと、面白いことが起きます。

AIの「喋り出し」が、そのまま残ってしまうんです。本来コードには絶対に出てこないはずの、こんな一節が。

“As an AI language model, I cannot…”

私はAI言語モデルなので、…はできません。

“Certainly! Here’s the updated code:”

もちろんです! 更新後のコードはこちらです:

これは作り話ではありません。2023年、この「As an AI language model」というフレーズが、Amazonの商品レビューや、あろうことか学術論文にまで大量に紛れ込んでいるのが見つかって、話題になりました。AIの答えを、中身を読まずにコピペした痕跡です。同じことが、コーディングの現場でも起きている。命名すらAIに任せる時代なので、当然といえば当然ですね。

あなたも、うっかり残していませんか?

公開の場に「うっかり」残るものは、いろいろです。冒頭のクレデンシャルのような、笑えない危ないもの。深夜に「please work」とつぶやいた、人間の本音。そして最近は、AIの「Certainly!」という喋り出し。

興味深いのは、この「うっかり」の主役も、少しずつ人間からAIへ移りつつあることです。かつてコードに滲んでいたのは、書き手の疲れや本音でした。これからは、書き手が読まずに通したAIの言葉が、その場所を埋めていくのかもしれません。

ここまで書いていて気になっだので、自分のコードも検索してみました。私はコーディングエージェントをフル活用しているのであまり気にしていませんでした。——AIが書いたコメント、たくさん出てきました。私は一度も読んでいません。

たとえば、ある処理には、ただ一言「※ 約17秒かかる」。何がとは言いませんが、17秒です。別のところには「注意: 起動のたびにリセットされます」と、儚い運命を淡々と受け入れているメモ。そして極めつけが、コード全体でたった一つだけ残っていた「TODO: 本物の認証をちゃんと実装する」でした。このコメントが意味するところ、さっぱりわかりません。もはやコメントの存在価値が・・・

参考:
whatthecommit.com(ランダムに”あるある”コミットメッセージを表示するサイト)
As an AI Language Model — Know Your Meme(AIの定型文が各所に紛れ込んだ現象のまとめ)

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